[蚊を絶滅させろ] Gene Driveと人類のモラル

どうも, しぇばです。地球温暖化の記事はさておき、6月に38.7度を記録した激アツの台北より記事を投稿しております。

海や山ではしゃぎたいあなた(パリピ)も、家で冷房ガンガンにしてXBoxやりたいあなたも、同様に蚊には苦しめられているはずです。

俺くんのように、蚊なんて絶滅すればいいんだ、と考えたことがある人も少なくないのではないでしょうか。

実は2016年現在、世界の科学者の頭脳は、本当に蚊を絶滅させかねない技術を開発しています。

というのも、俺くんや大部分の私たちのように、かゆいだ眠れないだ言っているうちは可愛いものですが、

ご存知のように蚊は凶悪なウイルス性感染症の媒介者です。

例えばハマダラカの一種ガンビアエハマダラカ(Anopheles gambiae)はマラリア原虫を運び、

220px-AnophelesGambiaemosquito

(from wiki)

ネッタイシマカは黄熱病やデング熱、最近話題のジカ熱などの媒介者です。

250px-Aedes_aegypti_biting_human

(from wiki)

そう、世界には真っ当な、蚊と戦う理由があるのです。


史上最恐:Gene Driveシステムとは


さて、そんな人間たちが思いついたのは、Gene Driveという特殊な遺伝の様式を強制的に遺伝改変により蚊に導入することです。はて、なんのことやら?遺伝改変?まあまあ、聞いてください。とにかくこれを利用してやれば、蚊を、いや、理論上はどんな動物でも(もちろん例外はありますが)絶滅に追いやることができます。

具体的にはどんなことができるのでしょう?例えば「遺伝改変した蚊を使って、蚊の次世代の子供をすべてオスにしちゃう。そしたらその次の世代の子供は当然生まれない。つまり絶滅」なんてことができちゃいます。そんなジーニーもびっくりの魔法みたいなことが可能なんです。もはや恐ろしい。

それでは、お待ちかね。蚊を絶滅に追いやることができるGene Driveとはなんなのでしょうか?下に解説しますが、難しいなーと感じる方はさらさらっと読んで次に進んでもらっても構いません。

Gene Driveを使った技術を一言で言うと、

人間が選んだ(人間にとって都合のいい)遺伝子をすべての蚊に広めることができる

技術のことです。

さて。下の図を見てみてください。

Gene Drive and Mosquito-page-001

(Credit: ScienceNews.org)

この図で、お父さんとなっている赤い蚊のマークは赤い”異常を起こした”遺伝子を持っていて、黄色のマークの蚊は黄色い正常な遺伝子を持っていると考えてください。性を持つ動物の場合、通常の遺伝方式では、父親から半分、母親から半分の遺伝子を受け継ぎます(左)。ここで一つの列は一つの染色体と考えて貰えばいいと思います。つまり、子供の蚊は異常な遺伝子と、正常な遺伝子を1個ずつ持っていることになります(homozygoteと言います)。

一方、ある特殊な遺伝システムにおいては、ある特定のDNAの領域が(この図で言うと異常を起こした赤い遺伝子の領域が)もう片側のDNA領域にも”コピペ”して乗移り、なんと両方の遺伝子を赤い異常な遺伝子へと変えてします。このあたかも遺伝子が”自分勝手に”50%の確率以上で子に遺伝していく現象のことをGene Driveといいます。

 


で、結局どうやって絶滅させるわけ?


 

ん…?なぜこれが蚊を絶滅させる武器になるんだろう?

 

そう、Gene Driveはただの現象であって、絶滅を引き起こすのはこれを利用する人間の(悪)知恵です。さて、もう一つ図があります。

Document-page-001

さて、勘がいい人は既に蚊を絶滅させうる仕組みに気づいているかもしれません。

水色の蚊を、「人間の都合のいいように遺伝子改変した蚊」だと考えてください。例えば、「マラリアを運ばないように遺伝子改変した蚊」というような具合です。ちなみに、近年の急速な遺伝子編集技術(CRISPR/Cas9など)によって、かつて考えられなかったほどの正確さ、スピードで生物の遺伝子を組み替えることができるのですが、これまた面白いトピックなので詳しくはまた別の記事にしたいと思います。笑

そして黒い蚊は「撃退したい野生の蚊」です。病気、例えばマラリアの媒介者だと考えてくれればいいでしょう。

まず通常の遺伝の場合を見てみましょう。我々の目標としては、水色の蚊の遺伝子を野生の蚊の集団にとにかく早く効率的に広めたいわけです。といっても、遺伝改変した虫を研究所で育てて野生に放つわけですから、そんなに青い蚊を数多くは作れません。一方野生には黒い蚊が無限に(近いくらいいっぱい)いる。。ということで、通常の遺伝様式では、どんなに都合のいい蚊を作って野に放っても、その遺伝子が遺伝するのは確率50%のうえ(上の議論を見てね)、数では多勢に無勢ですからこの遺伝子が広まるはずがなく、それなら殺虫剤を撒いたりする方がよっぽど効率よくね?となるのですが。。

この青い蚊の「都合のいい遺伝子」にGene Driveを導入できたらどうでしょうか?

水色の蚊と野生の蚊の子供は、もれなく水色の蚊になります。水色の蚊どうしの子供ももちろん青い蚊ですから、水色の蚊の数はねずみ算的に増えていきます(下側の画像)。つまり、野生の蚊の数を圧倒するほどのとんでもない数の水色の蚊を用意しなくとも、勝手に「都合のいい遺伝子」が増えていくのです!!

例えば…「この遺伝子を持っていると必ずオスになる」というように遺伝子改変し、野にはなったらどうでしょうか。図の青い蚊はどんどん増え、やがて野にはオスしかいなくなる。そしてじきに… 絶滅です。

>>>next: 3/3 一寸の虫にも五分の魂

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です