最近”Edtech”ってアツいけど、「教育工学」って知ってる?

お初にお目にかかります。C.ロナです。(クリックで自己紹介ページへGO!)

今回は初投稿ということで、自分の専門である「教育工学」という分野について、あまり聞き馴染みの無い言葉だと思いますので簡単にご紹介したいと思います。


教育工学とは?


「工学」と聞くと、”engineering”のイメージが強く、何か教育用のハードウェアや、デジタル教材などのソフトウェアを創り出す学問分野と認識されがちです。

しかし、教育工学は”educational technology”と呼称されており、
上記のようないわゆる「テクノロジー」としての”技術”だけでなく、
例えば、教師の指導技術といった「スキル」という意味での”技術”も含んだ概念です。

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さらには、教師と生徒が、また生徒同士が、より活発な学習的コミュニケーションを取れるようにするには、どのような学習プログラム教室空間を設計すれば良いのか。
そのようなこともこの分野の研究対象です。

以上述べてきて分かるかもしれませんが、「教育工学」という学問領域はかなり広大で、人によってその定義もまちまちです。なので、ここでは正確な定義について議論することは避けて、
「へ〜、こんな学問分野があるんだー」
くらいのノリで、頭の片隅に残して置けるように、簡単なイメージだけお伝えしておきます。

「教育工学」とは、

“より良い教育実践を行うために、学びの環境をデザインする”
(環境は、授業設計・指導手法・教具・空間設計などかなりひろ〜く捉えてください!)

といった感じです。(あくまでイメージ!)

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こんな授業が来る日が待ち遠しい!

さて、「教育工学」は、ICTを活用したハードやソフトの設計に留まらないと述べましたが、
近年のテクノロジーの進歩による情報化の流れに後押しされ、注目が増していることもまた事実です。

政府も、2020年までに小中学校で1人1台タブレット端末導入を目標に掲げていますし、
表題の”Edtech”(”Education × Technology”を意味するビジネス用語)においても、e-ラーニングやデジタル教材などが市場を賑わせています。
(個人的には、VRの教育利用にとてもワクワクしています!)

今後もICTの教育利用は、ますます加速していくものと思われますが、
当然ただ導入すれば教育効果が高まるものではなく、どのように活用すべきかが問われます。
その点において、「教育工学」は今後ますますその役割を増していくでしょう。
私もその流れのなかで、教育現場に貢献できればと思っています!

では、これだけではあまり「教育工学」について分かった気がしないと思うので、
具体例として、「MIT TEAL」という事例を簡単に紹介しておきたいと思います。


「MIT TEAL」とは?


 

“TEAL”とは、”Technology-enabled active learning”のことで、
2005年から、MIT(マサチューセッツ工科大学)の初等物理学の講義で実践されている授業形式です。

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教室(上から見た図):グループ学習用に円形テーブルが複数あり、全体に目を配れるよう教室の真ん中に教卓がある。

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教室(正面図):モニターが複数取り付けられ、各テーブルの実験の様子や発表内容を映し出す。

授業風景

授業風景:テーブルの真ん中に、シミュレーション用のコンピューター機器があり、実験を行いながらグループでディスカッションする。

電磁気学のシミュレーション図

電磁気学のシミュレーション図:イメージしづらい物理法則をヴィジュアライズすることで理解を促進させる。

さすがMITと言いたくなるような教室設備ですが、
実際このTEALを始める前、この初等物理学のコースは一斉授業の講義形式をとっており、出席率50%・落第率15%、そして生徒たちからの感想は、「物理は無味乾燥としていて退屈だ。」というものでした。

そこでMITはTEALの取り組みを始め、イメージしづらい物理法則のヴィジュアライズやシミュレーションにより理解を促進し、またグループ毎に実験・課題解決をしていく協同学習の形式を取り入れた、授業・教室設計を行いました。

その結果、よく分かっている人が分かっていない人に教えるといった協同学習の成果なども見られ、特に低成績層(といってもMITの学生!)の底上げに繋がりました。(もちろんこれですべてが解決されたわけではなく、不満や課題は残されています。)


まとめ


「学びの空間」の設計という面で、一つの事例を紹介しました。
正直、このMITのTEALはめちゃくちゃお金がかかっているので、簡単には真似できませんが、
日本でも、アクティブラーニングや協同学習を促進する「空間」の設計は、ラーニング・コモンズなどの形で推進されています。

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同志社大学のラーニング・コモンズ

悲しいかな、教員の権威を象徴するような古き(良き?)教室風景も、変容しつつあるのです・・・。

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さて、簡単に「教育工学」について説明してきましたが、イメージはついたでしょうか?
まだまだ「反転学習」「ワークショップ」「シリアスゲーム」などといった様々な研究対象があるので、これらも今後ご紹介していきます。
まだよく分からないという方は、今後の記事を読みながら、徐々につかんでもらえればと思います!

また、「教育工学」において実践的な研究をしていく上でも、
「そもそも人はどのように学ぶのか?」という根源的な問いを明らかにしていかなければなりません。
それに関する記事についても今後ポストしていきたいと思いますので、ぜひご期待ください!

p.s.「やる気」についての記事をポストしてあるので、ぜひご一読ください!
そろそろ「やる気」を経験的に議論するのはやめようか。(1)

※画像引用元

http://footage.framepool.com/ja/shot/941680184-football-shoe-keepy-uppy-amateur-sports-soccer-ball
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52203835.html
http://icampus.mit.edu/projects/teal/
http://ryoshinkan-lc.doshisha.ac.jp/usage/groupwork_area.html
http://fundo.jp/42483

※参考文献

http://www.waseda.jp/student/shinsho/html/66/6633.html
mit iCampus

投稿者プロフィール

C.ロナ
C.ロナ
【専攻】教育・教育工学
【所属】東京大学大学院学際情報学府修士1年

・「記憶」や「理解」など「学習」に関わる脳内メカニズム
・「学習理論」や「教授方法」
・教育の歴史
・最近の学校教育の動向、教育格差
・EdTech
etc.

脳科学や教育心理学、社会学などの知見を活用して、教育に関わることを全般的にポストしていこうと思います!

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