アメリカ大学院訪問記(1)―スタンフォード大学見学

前回の記事では、東大院生の日常(バイオを学ぶ大学院生の事情)に焦点を当てましたが、今回の記事は、筆者が博士課程リーディングプログラムでアメリカの西海岸を一週間訪問してきた、非日常を紹介したいと思います!

多くの人が聞きなれないであろう、この博士課程教育リーディングプログラムというのは簡単に説明すると、博士後期課程に進むことを前提として、学生に対して修士課程の時期から行われる本専攻とは別の教育プログラムです。2016年現在全国で63プログラムが存在し、そのカリキュラムはプログラムごとに異なります。僕の所属しているプログラムでは産官学で活躍する博士号取得者を送りだすべく、分野横断型の講義インターンシップ研究留学奨励金の支給や今回のような海外研修を行っています。興味をもった人はググってみましょう。

そう、決して遊んできたわけではないのです!ということで、いつもと異なるアメリカという環境に飛び込んだ中で感じたことなどを、数回に分けて書いていきたいと思います。

現在進行形でNYの大学院に在籍しているコロンビア大学のShevaの記事(コロンビア大学院生のとある一日(勉強編))や機械系の東大院生であるハマの記事(機械と格闘する東大生の日常)もよかったら合わせてお読みください。


初日: スタンフォード大学見学


初日の午前中は参加者全員(23人)でスタンフォード大学のキャンパスツアーに参加しました。

スタンフォード大学はアメリカのカリフォルニア州に位置するアメリカ屈指の名門大学で、2015年の世界学術大学ランキングではハーバード大学に次いで2位(東大は21位)にランクインしています。場所はサンフランシスコから車で1時間ほどの内陸に位置しており、地理的にも歴史的にもシリコンバレーの中心地として知られています。著名な日本人で言うと麻生太郎元首相や鳩山由紀夫元首相が留学していたとか。


キャンパスの様子


キャンパスの特徴は、とにかく広い!!!あと、2月にも関わらずここは夏かっていうぐらい日差しが強く気持ちの良い晴天でした。そう、これぞカリフォルニアっていうかんじ。

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あふれ出るリゾート感。一週間ずっとこんな天気でした。

スタンフォードで研究員をしている日本人の方にキャンパスツアーをしてもらったのですが、その方は2年以上スタンフォードにいるのに知らない場所ばかりだそうです。

気になっていまWikipediaで調べてみたのですが、キャンパスの面積は3310ヘクタールらしいです。イメージできない?東京ドームに換算すると約700個分です。とてつもなく広い国立公園みたいなものを想定してもらえば大丈夫だと思います。実際に訪問した僕もあまりイメージはできていません。

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高いタワーのような建物からの眺め。なんだか観光客気分。


研究室の様子


午後はいくつかの研究室の中と学科の共通機器を見学しました。案内してもらった研究室が入っている建物が数年前に建てられたばっかりのものだったこともあり、非常に近代的なつくりでした。

印象的だったのが、部屋のほとんどガラス張りで、中で何をやっているのかが丸わかりだったことでした。また、思いついたアイデアをその場でシェアできるように、いたるところにホワイトボードと誰でも使えるガラス張りのディスカッションルームのようなものもありました。なんとも、議論好きなアメリカ人っぽい。

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建物の中。各階にキッチンが完備されていたことに感動。(たまたまこの建物が新しかったからというのもあります)

研究室の中は、日本の研究室と比べるとスペースに少し余裕がありましたが、実験機器の充実具合にはそれほど差はなく、むしろ日本の大きな研究室のほうが充実しているように感じました。聞いた話によると、アメリカでは非常に高価な機器は共通機器として学科単位で購入し、各研究室が使った分だけお金を払うシステムをとることが多いようです。共通機器はすべての人にオープンなので、予約をした限られた時間にしか使えず一見不便なようですが、その代わりに浮いたお金で機器専門のスタッフが雇われています。そのため故障した時の修理は担当のスタッフが迅速に2、3日で修理してくれ、定期的なメンテナンスも行ってくれます。日本の、実験機器を基本的に研究室単位で管理していて使い放題だけども、壊れたときはわざわざ業者まで送って修理してもらうシステムと比較して一長一短だとは思いますが、なかなか新鮮でした。

実験機器というのは卒論や修論前の皆が追いこんで実験しているときほど負荷がかかり、そういうときに限って故障してしまい皆の実験が数週間にわたって止まってしまうものなのですよね、、、。あと定期的に企業の人に来てもらってメンテナンスしてもらうのも、必要だとわかってはいても面倒で忘れがちになりますしね。ちゃんとしている研究室ではちゃんとしているのでしょうが。


企業との関わり


スタンフォードはGoogleFacebookなど名だたるアメリカの大企業が乱立するシリコンバレーの中心にあり、スタンフォードの歴史を語る上で企業との関わりは避けて通れません。ヒューレットパッカード(HP)の創設者であるウィリアム・ヒューレットとデイビット・パッカードもスタンフォードの卒業生で、スタンフォード大学の支援のもとパロアルト(スタンフォードの位置する場所の地名)の小さなガレージから会社をスタートさせたことが知られています。

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その後も、スタンフォードは広大な敷地の一部を企業に貸し出し、企業へ投資し、その分見返りとして利益の一部を受け取ることで大学として発展し、それと同時にシリコンバレーの発展にも大きく寄与しました。このようにシリコンバレーの発展を支えたスタンフォードは企業との関わりを非常に重要視しており、そのことがわかる点がいくつかありました。

例えば、前述の学科の共用機器は学内だけではなく学外の企業の研究員にもオープンになっているそうです。しかも学内、学外の優先順位は平等。

また、僕らの見学した建物内には起業した学生などがオフィスとして使えるデスクが多数用意してあり、学生の起業も積極的に支援しているそうです(年何人起業しているとか説明していたけど忘れた)。

ここまで産業界との結びつきが強く、さらに学術的な研究のレベルも高い大学は日本にもなかなかないのではないでしょうか。


ディナータイム


写真撮り忘れましたが、アメリカのピザは厚くて大きかったです。一切でおなか一杯。

写真撮り忘れましたが、アメリカのピザは厚くて大きかったです。一切でおなか一杯。

そしてこの日の最後のイベントは、スタンフォードの学生との交流会でした。東大の学生とスタンフォードの学生が入まじった7~8人ほどのグループで軽い自己紹介のあと、自分たちで決めたお題についてディスカッションをしました(もちろん英語で)。

自分のグループは「AIと人間の比較」について話したのですが、同じグループになったポスドク2人の英語が速すぎて全くついていけませんでした。

自分は少しの間海外経験があるおかげで英語には少し自信があり、実際今回の研修でも一対一ならば英語でまともなコミュニケーションをとることができました。しかし、アメリカ人同士の非常に早い議論にはついて行くのがやっと(というかほとんど何を言っているのか分からなかった。耳も思考もついていけない)で、そこに割り込んで自分の意見を伝えることのハードルの高さを感じました。Shevaの記事にもありましたが、英語は日本にいるうちに勉強しておいてもしすぎることはないのだなと決意を新たにしましたとさ。

そんな感じで初日はあっという間に終わってしまいました。

初日だけでだいぶ長くなってしまいましたが、実はこれからがこの研修の本番!2~4日目は自由な時間が与えられ、各々事前にアポをとってある研究室に突撃しました。

といっても、まずアポ取りから苦戦の連続…。行ってからもドタキャン、たまたま聞けた著名な研究者のセミナ―、シリコンバレーの会社訪問等々いろいろとありました。(2)以降もお楽しみに!

 

ドラゴン

 

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投稿者プロフィール

ドラゴン
ドラゴン
4月から博士後期課程1年生。工学部で生命科学の研究をしています。
化学・生物全般に興味があります。

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