ゲリラ豪雨も予測可能?天気予報の新たなカタチ


入道雲とゲリラ豪雨


 

夏といえば,もこもこと空高くできる「入道雲」です.

正しくは,このようなタテ方向に大きい雲を「積乱雲」といいます.上昇気流が強い時にできるため,地上の気温が高い夏場に良く出現します.

 

積乱雲の特徴は,

・横に小さく,縦に長い

・温度差が大きいほどできやすい

温度差が大きいとはつまり,「狭い地域で,不安定な気象条件」のときに見られる雲ということ.

 

数年前から「ゲリラ豪雨」という言葉がよく聞かれるようになりました.また,最近だと竜巻も頻繁にニュースになっています.ゲリラ豪雨も竜巻も,短時間にとても狭い地域に影響を及ぼします.これらの現象を起こすのが,積乱雲なのです.

ゲリラ豪雨が「ゲリラ」たる理由は,「予報できない」ことです.これは急激な積乱雲の発達をうまく観測できないために起こっています.現在のパラボラアンテナの観測時間:10分というのは,このような現象に対しては長いのです.

 


”特殊な目” 「フェーズドアレイアンテナ」


この問題を解決してくれそうなのが,「フェーズドアレイアンテナ」です.

フェーズドアレイアンテナというのは,小さなアンテナが縦横にびっしり並んでいるようなもので,これらを上手く連動させることで,電波を出す方向を変えられるアンテナです.

この技術自体は珍しいものではなく,軍艦のレーダーや天体望遠鏡などで既に利用されています.

フェーズドアレイの良いところはアンテナ本体の上下の向きを変えないで,発する電波の向きを変更できること.これによって様々な方向の物体を検知することができます.

 

➢フェーズドアレイアンテナの原理

まずは「球面波」「干渉」という二つの単語について.

水の上に石を落とすと円形の波が広がります.これが「球面波」です.フェーズドアレイアンテナは小さなアンテナを敷き詰めたようなアンテナで,それぞれのアンテナからは球面波が発されます.

また波の性質の一つに「干渉」というものがあります.簡単には,別々の波がぶつかる時に山と山だと強め合い,山と谷だと弱めあうというもの.例としては,ヘッドフォン等についているノイズキャンセラ.外部の雑音をキャッチしてそれに対応する音波を出すことで,雑音を弱めます.

フェーズドアレイアンテナはこの干渉を利用して,波全体の進む向きを自在に変えることができます.横に並んだアンテナを同時に発振すれば真っ直ぐな電波を,少し時間差をつけて発振すれば斜め向きの電波を出すことができるのです.

phasedarray_image (2)

黄色が個別のアンテナ. (左)同時にアンテナを発振した場合  (右)時間差をつけて発振した場合

大型プール施設に”波の出るプール”がありますよね.あれをイメージすると良いかと思います.よくよく思い出すとプール全体に横一直線の波が起こるときと,プールの右端と左端で時間差の波が起こるときがあります.あのプールを上から見たらきっとこんな感じです.

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